データで見る福井: 有効求人倍率は東京に次ぐ全国2位、採れる人はもういない

「人が採れない」は、もう何年も福井の経営者の口から出続けている言葉です。データで見る福井の第5回は、その実態を数字で確かめます。結論を先に書くと、福井の有効求人倍率は1.73倍で全国2位、1位の東京(1.76倍)とほぼ並んでいます。そしてもっと重要なのは、その裏側の数字のほうでした。働ける人はほぼ全員すでに働いていて、しかも会社を辞めない。採用という手段で人手を増やす余地が、福井にはほとんど残っていない——統計はそう読めます。

有効求人倍率1.73倍、東京とほぼ並ぶ全国2位

有効求人倍率の都道府県ランキング(2024年度)。福井県は1.73倍で全国2位、1位の東京都1.76倍に迫り、全国平均1.25倍を大きく上回る

有効求人倍率は、求職者1人あたり何件の求人があるかを示す数字です。1.0倍を超えれば求人のほうが多い=人手不足を意味します。2024年度の福井県は1.73倍で全国2位。1位の東京(1.76倍)とほぼ差がなく、全国平均の1.25倍を大きく上回っています。3位は石川(1.53倍)、4位は岐阜(1.52倍)で、北陸・中部が上位に並ぶ構図です。

1.73倍というのは、求職者100人に対して求人が173件あるということ。仮に求職者が全員どこかに決まったとしても、73件分の求人は相手が見つからないまま残る計算です。東京と同じ厳しさの採用市場に、福井の中小企業は置かれています。しかも東京の企業と違い、知名度でも給与水準でも正面から張り合うのは簡単ではありません。

働ける人は、すでにほぼ全員働いている

求人倍率が高いだけなら「募集の出し方を工夫すれば」という話になります。しかし福井の場合、その先の数字がもっと厳しい現実を示しています。

福井県の労働参加に関する4指標の全国順位。就業者比率97.1%で全国2位、女性の労働力人口比率54.5%で全国1位、65歳以上の就業者割合29.0%で全国3位、離職率3.0%で全国47位(最下位)

並べてみると、労働市場が飽和していることがはっきりします。

  • 女性の労働力人口比率は54.5%で全国1位(全国平均48.1%)
  • 就業者比率は97.1%で全国2位(働く意思のある人のうち、実際に職に就いている割合)
  • 65歳以上の就業者割合は29.0%で全国3位(全国平均24.7%)
  • 離職率は3.0%で全国最下位の47位(全国平均3.8%)

女性は全国で最も働いていて、シニアも3割近くが現役。職を探している人のほぼ全員が就職済みで、しかも入社した人は辞めない。「まだ働いていない人」という余剰が、福井にはもう残っていないということです。第2回で見た共働き世帯の割合全国1位も、この飽和の一面でした。

離職率が低いのは本来なら誇っていい数字ですが、採用市場から見ると別の意味を持ちます。他社を辞めた人が労働市場に出てこないので、中途採用で獲れる人材そのものが少ない。定着の良さが、そのまま流動性の低さになっています。

若者の取り合いも、すでに終わっている

「では新卒を」と考えたときの数字も見ておきます。福井の高校卒業者のうち県外に就職する人はわずか9.6%(全国42位、全国平均18.4%)。青森の41.1%、鹿児島の37.8%と比べると、地元に残る率は極めて高い水準です。

これは福井にとって幸運な条件です。多くの地方県が抱える「若者が都会に出ていく」という問題は、福井では相対的に軽い。ただし裏を返せば、県外に流れている若者を呼び戻して人手を増やす、という余地も小さいということでもあります。9割が既に県内に残っているのですから、そこから追加で採れる人数は限られます。高卒の求人倍率は3.96倍(全国13位)で、県内企業同士の取り合いはすでに激しい状態です。

1万3594人の外国人労働者を入れて、なおこの倍率

ここで「最近増えた外国人労働者は関係ないのか」という疑問が出てきます。県内で働く外国人は2024年10月末時点で1万3594人と過去最多。前年から2493人、22.5%増という伸びで、全国平均の12.4%増を大きく上回りました。2020年は1万339人でしたから、直近4年でも3千人以上増えています。

注目したいのは受け入れ側の顔ぶれです。雇用している事業所は1841所あり、そのうち従業員30人未満の会社が1183所と全体の64.3%。しかも規模別で最も増加率が高いのがこの30人未満(前年比7.7%増)で、逆に500人以上の事業所は唯一の減少(3.2%減)でした。外国人雇用はもう大企業の話ではなく、小さな会社のほうが先に動いているというのが福井の現状です。

ただし数字の読み方には注意が要ります。有効求人倍率が高い原因が外国人の増加、というわけではありません。有効求人倍率はハローワークの求職者数を分母に計算するので、技能実習や特定技能で来日して直接就職する人は、そもそもこの分母にほとんど含まれません。外国人が増えても倍率は下がりにくい構造です。

むしろ因果は逆に読むべきところでしょう。1万3594人という労働力を追加で受け入れてなお、求人倍率は1.73倍で全国2位のまま——それだけ元の穴が大きいということです。産業別では製造業の4775人(全体の35.1%)が最多で、うち繊維工業だけで1883人。ものづくりで働く人の割合が全国6位という福井の産業構造が、そのまま受け入れ先の構造になっています。

そして在留資格の内訳を見ると、「連れてくる」手段の限界も見えてきます。最多は技能実習の5326人(39.2%)ですが、伸びが大きいのは身分に基づく在留資格(定住者・永住者など)の4787人で、前年比31.0%増。国籍別ではブラジルが3278人で49.3%増と突出しており、その99.9%がこの身分に基づく在留資格です。期間の定めなく働ける人が増えている——つまり福井の外国人雇用は、一時的な労働力の借り入れから、地域に住み続ける人の採用へと性質が変わりつつあります。

これは会社側の準備の中身も変えます。技能実習・特定技能には在留期間の上限や受け入れ枠があり、住居や生活支援まで会社が担うのが実情ですし、円安が続けば他国との人材の取り合いにも巻き込まれます。「人を連れてくる」系の手段は、すでに福井もかなり使い込んだ後だと見るのが妥当でしょう。加えて日本語が母語でない人が現場に増えれば、口頭とベテランの勘に頼った指示の出し方そのものが回らなくなります。作業手順を写真や動画で残す、指示を文字にしてから渡す、翻訳を挟める形で情報を共有する——こうした「言語に依存しない仕組み化」は、外国人雇用とデジタル化がぴったり同じ答えを指す場面です。

採用で埋まらない分は、仕事の量を減らすしかない

ここまでの数字を一つにまとめると、こうなります。福井は「募集をがんばれば人が採れる県」ではなく、「採れる人がもういない県」です。求人倍率が東京並みという事実だけを見ると採用の工夫が答えに見えますが、労働参加率・離職率・県内就職率の3つがすべて限界近くまで振り切っていて、そのうえ外国人労働者の受け入れも10年で倍増させた後の数字です。母集団そのものが枯れています。求人票の書き方を直しても、給与を1割上げても、いない人は来ません。

だとすれば残る道は、人を増やすことではなく1人あたりの仕事量を減らすことです。福井の会社なら、採用予算を増やす前に、まず今いる人が何に時間を使っているかを1週間だけ記録してみることをおすすめします。編集部の推奨はここです——求人広告に月10万円を追加で払う前に、その10万円で削れる作業がないかを先に確かめる。多くの場合、見積書の下書き、日報の転記、電話の一次対応、FAXの手入力といった「誰でもできるが誰かがやらねばならない仕事」に、正社員の時間がかなり食われています。

これらは今のAIやクラウドの道具が最も得意にしている領域でもあります。当サイトで扱ってきた事務作業へのAI導入AIが向く仕事・向かない仕事の見分け方も、突き詰めればこの数字への対応策です。求人倍率1.73倍という環境では、デジタル化は「余裕があればやること」ではなく、人が採れない前提で事業を続けるための条件になりつつあります。

もう一つ、65歳以上が就業者の29.0%を占めるという数字も忘れないでおきたいところです。新しい道具を入れるときに「若い人だけが使えるもの」を選ぶと、3割の戦力が置き去りになります。導入の判断基準は機能の多さではなく、いま現場にいる人が明日から触れるかどうか。それが福井の人員構成に合った選び方です。

出典

  • 総務省「社会生活統計指標-都道府県の指標-」有効求人倍率(2024年度)、就業者比率・高齢就業者割合・労働力人口比率(2020年、国勢調査ベース)、離職率(2022年、就業構造基本調査ベース)、高等学校卒業者に占める県外就職者の割合・高等学校新規卒業者の求人倍率(2023年度)。いずれもe-Stat APIで取得、2026年8月時点
  • 福井労働局「『外国人雇用状況』の届出状況について」(令和6年10月末時点、2025年1月31日公表)。全国平均の増加率は厚生労働省の同調査全国版による
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